ウエルフェアみやざき総合研究所

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【第16回目】統合失調症(上) (宮崎日日新聞社 細見コラム「よりよく生きる」2022年5月11日掲載分)

【第10回目】

統合失調症(上) (宮崎日日新聞社 細見コラム「よりよく生きる」2022年5月11日掲載分)

 

先月(2022.4.9)、「ドキュメント72時間」というNHKテレビ番組を見てとても印象的で感動したシーンがありました。渋谷の街で1本の桜の小枝を皮切りに物々交換をしながらいろいろな人の話を聞くという構成になっており、ユーチューバーやゲイの人などに交じって統合失調症の男性が登場しました。彼は既に何回か交換されたブラジル製の缶ビールとチョコレートを受け取り、渋谷のお店でその日購入したばかりのピンクのニット帽を渡しました。「言いにくいんですけど、ちょっと精神の病気になってしまって・・・心の声が聴こえるんです。統合失調症というんですけど・・・。」彼は長い間外出できない時期もあったが、現在は家業を手伝いながら一人で旅行できるまでに回復したそうです。「今は前向きです。笑うことができます。」「心の声ともうまく付き合っています。」彼はカメラの前でとても穏やかな表情で淡々と話をしていました。

 

統合失調症は発病頻度が120人に1人と言われるほどポピュラーな病気ですが、その割には一般の人には情報が少なく、危険、治らないといった誤解や偏見が多いのはとても残念です。これは100年以上も前にクレペリンやブロイラーという学者が「早発性痴呆」、「精神分裂病」と銘打って予後不良の病気として報告したことや、わが国では世界の潮流に逆行して入院中心の隔離施策が進められ、地域ケアが広がらなかったことが大いに関係しています。このような誤解と偏見を取り除くためには当事者自身がカミングアウトしていくことが一番の早道だと私は日ごろから考えていたので、この番組を見てとても感動したのです。

 

心の健康とは単に病気や障害がないということではありません。病気や障害があっても、それを受け入れつつ、前向きによりよく生きる(ウエルフェア)ことこそが心の健康だと私は思っているからです。

 

次回は統合失調症についてわかりやすく解説したいと思います。