- ホーム
- 【第21回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月3日掲載分
【第21回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月3日掲載分
【第21回目】
宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月3日掲載分
よりよく生きる 21
高齢化社会と認知症(下)~パーソンセンタードケア~
ウエルフェアみやざき総合研究所 精神科医 細見 潤
パーソンセンタードケアはわが国でも認知症ケアの基本になっているものです。これは認知症という脳の「器質的な病変」に注目するのではなく、認知症という病気のある「人」に注目します。即ちどのような家庭に育ち成長し、どのような思いで仕事に就き人間関係を築いてきたのか。配偶者や子どもなどに対してどのような思いを持ち家庭を築いてきたのか。さらにインパクトのある体験があればそれはどのようなもので、その時どう感じたのか。そして現在の家族、友人を含む人間関係や生活状況などはどうなのかなど、「その人の人生を知る」ことからパーソンセンタードケアは始まります。このことによりその人の性格や価値観、得手不得手、興味の対象、困った時の対処スタイルなどを理解し、その人のニーズに合った適切なケアを提供していく。これがパーソンセンタードケアです。
以前、私が講師を務めた認知症に関する研修会で、ある高齢者施設の男性介護スタッフから被害妄想が激しい認知症の人への対応に苦慮しており、どうすれば良いかという質問を受けました。私は彼にその認知症の人はこれまでどんな人生を歩まれてきたのですかとお聞きしたところ、全く把握していませんでした。彼はパーソンセンタードケアを知らなかったのです。
認知症のある人のニーズはさまざまですが、共通していることがあります。それは共感できる人との結びつき(馴染みの関係)、誰かの役に立ちたいという役割意識、そして自分らしく生きる、心穏やかに生きたいということです。これにどう応えていくかが認知症のある人を支える私たちに求められると思います。
ところで前述したニーズは認知症のある人だけのものでしょうか。私は私も含めて高齢者が誰しも持つニーズだと思っています。
次回は「その人の人生を知る」ためのツールとして回想法がとても有効であることをお話ししたいと思います。