ウエルフェアみやざき総合研究所

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【第23回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年9月7日掲載分

【第23回目】

宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年9月7日掲載分 

よりよく生きる 23 

 

回想法(下)~ライフレビュー 人生統合し穏やかに~

ウエルフェアみやざき総合研究所 精神科医 細見 潤

 

 回想法には前回述べた「一般回想法」と本日取り上げる「ライフレビュー」があります。何歳になっても「行け行けドンドン」前ばかり見てポジティブに生きている人は素晴らしいと思いますが、一方では昔を懐かしむのはごく自然なことで、決して年寄りくさいわけではありません。米国の精神科医バトラーは人生を内的に振り返りながら、自分の人生を再確認し、もしも過去に未解決な心理的葛藤があればそれに向き合い、それを人生の中の意味あるものとして再統合していくライフレビューは、とても価値のあることだと言っています。

 

 また私たちはこの世に生まれ、成長し、老いて、死を迎える過程の中で、いくつもの課題に直面します。例えば思春期であれば親からの独立であり、老年期であれば老いや死の受け入れです。その課題をうまくクリアすることで、その人の人生は豊かなものになり、人間的な成長にもつながりますが、ライフレビューは老年期の課題をクリアしていくための有効な手段にもなるものです。

 

 私事で恐縮ですが、私は聞き書き作家の小田豊二先生に依頼して、母のライフレビュー本である「人生は、いま、夕焼け。」を母の95歳の誕生日に出版しました。出版記念祝賀会で私は母に「生前葬のつもりであいさつをしてね」と告げ、母はフンと鼻で笑いながらお集まりいただいた大勢の皆さんの前でそつのないあいさつをしました。そしてその半年後に母はあの世に旅立ちました。とても穏やかな最期でした。私は母の葬儀を自宅で執り行い、灰になった母を胸に抱いて火葬場から帰路に就くと、母の旅立ちを祝うように西の空は真っ赤な夕焼けで染まっていました。

 

 私には寂しさこそあれ悲しみはありませんでした。それは「人生は、いま、夕焼け。」をまとめることで、母は自分の人生を統合し納得していたという確かな思いが私にあったからです。その時、私は思いました。私も母のようにライフレビューして、心穏やかに旅立ちたいものだと。(ウエルフェアみやざき総合研究所)