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【第15回目】 森田療法 (宮崎日日新聞社 細見コラム「よりよく生きる」2022年5月4日掲載分)

【第15回目】 

森田療法 (宮崎日日新聞社 細見コラム「よりよく生きる」2022年5月4日掲載分)

 

 不安障害に対する心理療法には、前回ご紹介した認知行動療法以外にもさまざまなものがあります。およそ100年前に森田正馬によってはじめられた森田療法もその中の一つで、認知行動療法が考え方を変えて不安をコントロールしようとするのに対して、森田療法では不安を「あるがまま」に受け入れることを基本としています。なぜなら不安は私たちが「よりよく生きる」ために必要な安全装置であり、不安を持つこと自体が問題ではなく、その不安にとらわれて本来その人がしたいと思うこと(自己実現)ができなくなることが問題だと考えるのです。

 

例えば対人恐怖の人は人前に出て話をすることがとても苦手です。それは人前では落ち着いて話をすべきであるという固定観念があり、そうでなくなることを過剰に恐れ、不安を感じてしまうからです。森田はその不安は自然なものとして「あるがまま」に受け入れつつ、人前で話をするという本来の目的に対して「あるがまま」に行動することを求めます。厳しいと感じる人も多いと思いますが、森田は「外相整いて内相おのずから熟す」と言い、行動することによって結果的に不安は軽減するものなのです。

 

今から40年以上も前のことになりますが、東京新宿にあった高良興生院という治療施設に私は研修に行きました。そこには全国各地から大勢の人が入所して森田療法を学んでいましたが、聖マリアンナ医科大学の岩井寛教授からお聞きした話は私にとって大変印象深いものでした。「釈迦の涅槃像を良く見ると両足が揃っているものと開いているものがあります。揃っているのは何の不安もない完璧に悟りを開いたお姿です。しかしそれは実は亡くなったあとのお姿なのです。お釈迦様でもそうなのですから、生きている私たちが不安を持つのは当然です。」

 

森田療法を学び会員同士の交流を深めるための「生活の発見会」があり、私はその協力医をしています。森田療法に関心のある人は是非「生活の発見会」のホームページをご覧ください。