- ホーム
- 【第22回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月10日掲載分
【第22回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月10日掲載分
【第22回目】
宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年8月10日掲載分
よりよく生きる 22
回想法(上)~一般回想法 暮らしやすい地域に~
ウエルフェアみやざき総合研究所 精神科医 細見 潤
家族に同伴されて認知症のある80代の男性が私のところにやってきました。彼はとても不機嫌で、どこも悪いところはないと言い、私が話しかけてもろくに返事もしてくれません。
私は家族から彼が若い時にダンスが好きだったことを聞き、私が幼い頃に自宅のすぐそばにあった「フロリダ」というダンスホールの話をしました。夕方になるとキラキラ衣装で着飾った女性たちが店の前でおしゃべり(客引き?)しているのを私は鮮明に記憶していたのです。すると彼の態度が変わり、「フロリダにはよく行った」と話に乗ってきました。彼の話はとても興味深かったので熱心に聞いていたところ、彼の機嫌はすっかり良くなり、これまでの人生についても積極的に語ってくれました。おかげで私は彼の人となりを知ることができ、その後の診察をスムーズに進めることができました。
昔の懐かしい品物や映像、出来事などを話題にすると話が盛り上がることは、皆さんも同窓会の集まりなどで経験されていると思います。これは回想法の中でも「一般回想法」と言われるもので、認知症のリハビリテーションに極めて有効であるとともに、回想を通して家族やケアスタッフがその人の人生や人となりを知り、より適切にその人に接することができるという極めて意味のある効果をもたらします。
この一般回想法を高齢者の生きがいづくりに応用しているところがあります。愛知県北名古屋市では、介護予防事業の一つとして一般住民を対象にして「回想法スクール」を開き、修了生は自主的に「いきいき隊」というグループを組織して、市が主催する行事に参加して地域づくりに貢献しています。これは地域回想法と言われるもので、私の研究所では回想法リーダー養成や普及のための講演活動を行っています。コロナのために思うように動けませんが、地域回想法が広く宮崎の地に根付き、ともに暮らしやすい地域づくりができると良いと私はいつも考えています。(ウエルフェアみやざき総合研究所)