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【第3回目】 つい頑張り過ぎるあなたへ(宮崎日日新聞「論風」2004年9月6日)

【第3回目】

つい頑張り過ぎるあなたへ(宮崎日日新聞「論風」2004年9月6日)

 

 私たちは「頑張る」ことはとても良いことだと教えられている。「頑張れ!」とは耳にタコができるほど聞かされるが、「頑張らなくていい」とは誰も言ってくれない。もちろん「頑張る」ことは大切なことで、自己評価を高め、さらには人間的な成長を促すことに異論はない。しかしながら、「頑張る人は生きている価値があり、頑張らない人は生きている価値がない」という強迫観念に大人も子どもも捉われており、つい頑張り過ぎて息切れを起こしている人は実に多い。それは過食嘔吐といった摂食障害、リストカット、薬物乱用・依存、仕事中毒、買物依存、ギャンブル中毒、アルコール依存、あるいはうつ状態といった「症状」として現われ、子どもでは不登校や引きこもり、非行、援助交際といった「問題」として現われる。中には「過労死」「過労自殺」といったように頑張り過ぎて命を落とす人までいるが、彼らに「そんなに頑張らなくてもいい」と言ったところで、彼らは「頑張る」ことしか教えられていないために、息切れした時に「症状」や「問題」を出したり、あるいは死んでしまう以外の方法を知らない。

 このような課題を抱えた人にとって、以下はとても重要である。 1.できることとできないことを見分ける賢さを身につける。できないことがあると認めることは恥でも何でもなく、誰にとっても極く当たり前のことである。その当たり前のことを受け入れる勇気を持つ。 2.「No」と言えるようになる。できないものは「できない」と誠実に言うこと。そのことで人間関係が悪くなることはない。もし人間関係が悪くなったとしたら、それはあなたの問題ではなく相手の問題である。むしろはっきりと言わないことで相手に期待をさせ、その期待を結果的に裏切ることで人間関係は最悪になる。 3.人に相談する能力を身につける。人に相談することはあなたの価値を下げるものではない。その能力を身につけ、相談できる人を自分の回りに確保すること。これを確保できていない人は早死が多く、平均寿命にも大きな差があるという研究報告すらある。 4.他人と比較しない。自分しか知らない自分自身のグチャグチャな内面と、他人の一見元気そうな外面とはそもそも比較にならないし、比較してはいけない。 5.目標を達したら必ず自分にご褒美をあげる。言葉、休暇、欲しかったものなど何でも良い。もしこれすら思い浮かばなければ、あなたは相当に病んでいると考える必要がある。

 さて「心の時代」と言われ始めて随分と長い時が経過したが、年齢、性別を問わず事態が益々深刻化しているのは何故なのだろうか?。「勝ち組・負け組」と大騒ぎをしたり、「二十四時間働けますか」といったキャッチコピーの栄養ドリンクが良く売れていると聞くが、世間の「頑張れ!頑張れ!」の大合唱は一体何時まで続くのだろうか?。

 今回を含めて6回ほど(アップしているのはこのうちの3回のみです)この『論風』に精神科医としての私の思いを述べさせていただいた。それは私がクリニックで出会う多くの患者様に繰り返し伝えているメッセージであり、多分、これからも伝え続けなければならないと考えているメッセージである。 「あなたは頑張り過ぎてはいませんか? 自分自身をきちんとケアしていますか?」