ウエルフェアみやざき総合研究所

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【第19回目】宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年7月6日掲載分

【第19回目】

宮崎日日新聞生活情報「ゆとり」寄稿 2022年7月6日掲載分 

よりよく生きる 19

 

高齢化社会と認知症(上)~早期発見を早期絶望としないために~

ウエルフェアみやざき総合研究所 精神科医 細見 潤

 

高齢化社会に伴い認知症のある人は確実に増えつつあります。厚生労働省の推計では2025年には700万人を超え、これは65歳以上の高齢者の実に5人に1人が認知症になることになります。しかし認知症に対する誤解や偏見はまだまだ根強く、早期発見の遅れとともに適切な対応がなされないためにご本人やご家族、周囲の人に混乱が生じ、このことが認知症のイメージをますます悪くしているのはとても残念なことです。

私はこれまで大勢の認知症のある人を診察してきました。そして診断名はできるだけ率直にご本人、ご家族にお伝えしています。それは病名を告知することで得られるメリットがデメリットをはるかに上回るからです。但し告知をする時に私はいつも以下のことを強調しています。

 

1.認知症は加齢とともに誰にでも発症するごくありふれた病気で、決して珍しくて恥ずかしいものではない。

 

2.認知症と診断されたからといって何かが劇的に変わるというものではなく、それまで通りの生活を続けることができる。

 

3.認知症は急に進むことはなく、その間にご本人・ご家族が病気について理解し、有効な対策をとることでさらに進行を抑制することができる。

 

4.有効な対策とは認知症のある人が安心して暮らせるような人間関係と生活環境を作ることで担保される。

 

特に4番目は重要で、その人の精神状態や家族関係、生活環境、経済状況に応じて具体的なアドバイスをします。そのことにより認知症が進行したとしてもその人らしく穏やかな毎日を過ごすことができるのです。

 

 時々認知症が進行して家族も分からなくなった人に私が「調子はいかがですか?」と声掛けして「いいばっかいですわ」という返事をもらうことがあります。私はホッとするとともに「上手に認知症になったなあ」と感心し、できれば私もあやかりたいと心から思います。

 

次回はこのような「認知症の達人」になるための条件についてお話ししたいと思います。