ウエルフェアみやざき総合研究所

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【第7回目】 関係性の病=共依存

【第7回目】

関係性の病=共依存

 

これはアメリカでのお話。ある精神科クリニックに夫のアルコール問題を何とかしてほしいという女性が相談にやってきました。夫は仕事にも行かずに朝から飲酒し、酒がなくなると荒れて女性に暴力を振るっていました。夫は明らかにアルコール依存症であり、女性は夫をなだめるために酒を買い与えていたのですが、このような生活にすっかり疲れ果てていました。 クリニックではケースワーカーが対応し、女性は何とか夫と別れることを決心して離婚しました。

数年後、その女性が再び精神科クリニックにやってきました。新しい男性との出会いがあり再婚したそうですが、その男性もまたアルコール問題があるというのです。 ケースワーカーが対応し、女性は二番目の夫とも離婚しました。さらに数年後、女性がまたクリニックにやってきました。付き合っている彼氏にアルコール問題があるというのです。

 この時、ケースワーカーは初めて気づきました。病気なのは夫や彼ではなく、この女性自身なのだと。

 何かと問題を抱える人の面倒を見過ぎて、苦しい苦しいと言いながらもその人との関係を断ち切れず、一生懸命頑張っている人がいます。Cさんもその一人で、彼女の夫はパチンコをしては借金を繰り返し、そのたびにCさんは必死の思いで返済に奔走していました。

 そのCさんに幸運の女神がほほえみました。夫が突然パチンコをやめると言い出し、勝手にギャンブル依存症の自助グループに参加するようになったのです。実に喜ばしいことですが、Cさんは元気になるどころか深刻なうつ状態に陥ってしまいました。彼女は一体どうしたというのでしょうか。

 前回登場したアルコール問題を持つ男性との関係を繰り返す女性と、Cさんには共通した課題があります。それは常に自分を必要としている人がいないと不安になり、その不安を打ち消すために何かと問題を持つ人にひかれ、その人との関係にのめり込むということです。これを共依存といい、その人にとって大きな生きづらさになります。

 私たちは誰かの役に立っていると感じたり、人から頼りにされたり、依存されることで自分の存在価値を確認し、自己肯定感を得ることがあります。

 もともと自己否定感や自己喪失感が極めて強く、常にむなしさや寂しさといった心の痛みを感じている人々にとって、何かしら問題を抱えた人の世話をすることは、たとえそのことで自分が傷つくと分かっていたとしても、一時的な自己肯定感を得るために、この共依存が必要になってくるのです。

 ここで問題なのは共依存ではなく、その人が抱えている極めて深刻な自己否定感や自己喪失感です。これには、子ども時代に当然のこととして与えられるべき親からの温かな愛情が与えられなかったという不幸な体験が関与していることが多く、それだけに問題の解決は容易なことではありません。

 しかしながら、方法がないわけではないのです。なぜなら彼らは共依存という方法を駆使しながらも何とか今日まで生きてきたのですから。

 共依存から抜け出すには確かな自己肯定感を獲得することが必要であり、専門家によるカウンセリングや同じ課題を持つ仲間との出会いは大変有用です。

 現代社会では効率や成果だけが重視されているところがあり、自分らしく生きることが難しくなっています。会社にとって役に立つ人間、他人にとって良い人、価値のある人であるように自己査定して生きている人は実に多く、このような生き方は共依存とまでは言わないまでも共依存的であり、ここから生じるむなしさや寂しさ、自己否定感はその人をアルコールや過食嘔吐(おうと)といったアディクション(依存症)へと駆り立てていくことがあるのです。

 自分自身を大切にすること、自分の健康と安全を誰にはばかることなく優先できることは、大変価値のある生き方であり、自己肯定感にも通じるものだと思います。

 スピリチュアリティこそ「こころ元気ですか?」に最もふさわしいキーワードだと私が思うのはこういう訳があるのです。